駄菓子屋じいちゃんエビス

第33話 持ちつ持たれつの関係

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娘の日葵を1日面倒見てもらうために日向は新潟県で農家をしている両親に頼んだのだが難しそうである。
日向の母の日美子からの返事では父が腰を痛めてしまって日葵の面倒が見れないということなのだ。
父が腰を痛めてしまった経緯を話し、今日中に対応できないことを伝える母。
後日からなら日葵の面倒が見れると言ってくれたのは有難いが
退院は明日のため、今日が肝心であり娘の日葵をどうするかを考えなければいけないのである。
日向の両親は他県に住んでいるため急な対応は無理なのは火を見るより明らかであり
農家の仕事で父が腰を痛めてしまった原因はどうやら重たい物を運んでそうなってしまったみたいだ。
半ばダメ元ではあったがタイミングがかなり悪いところで重なってしまった。
日野家の日を2つ使う面白いネーミングで太陽のような温かい家族の雰囲気を感じるが
日向が体調を崩してしまったことを機に日食のような陰りが見える。
先の不安はあるが前向きに捉えて頑張っていくしかない。
日美子「何もできなくてごめんね日向。」
日美子「でもどうしよう今日は、日葵を家で一人にするわけにはいかないよね?」
母の日美子は日向のことと孫娘の日葵のことを心配している。
日向「うん、一応他にあてはあるかな…」
日向「何かあったらまた連絡するね。」 ここで一旦両親との電話を切った。
後日両親が来てくれるそうだが今日の解決には至らなかった。
他にあてはあると言って日向の頭からすぐに浮かんでしまったのはエビスじいちゃん(星川店長)だった。
最終防衛ラインとして考えていたが、両親に頼れないので仕方がない。
今の状態の日向では他のことを考えられる余裕はないのである。
日向から日葵の母に戻し、日葵の母はまず学校に連絡した。
電話対応したのは丹下先生だったのですぐに話を理解してくれた。
日葵の母は丹下先生に自分の親族が今日一日、日葵の面倒を見ることができないことを伝えた。
丹下先生「あ…そうですか…」
それを聞いて丹下先生も困ったようである。
日葵の母「日葵は今学校にいるんですよね?」
丹下先生「いえ、店長の駄菓子屋にいます。」
日葵の母「え?星川店長の駄菓子屋にいるんですか!?」
てっきり日葵の母は、日葵が学校の教室で待機しているのだと思っていた。
日葵の母の思考はエビスじいちゃんに頼ろうとしていたのだが
まさか日葵は家族が助けに来れないことを予言したのだろうか。
確かに家族は現在他県のほうの新潟県で暮らしていることは知っている。
日葵の場合は祖父に当たるがおそらく祖父が腰を痛めたことはまだ知らないはずである。
日葵自らエビスじいちゃんの家で1日過ごすことを希望したのか丹下先生に聞いてみると
エビスじいちゃん自らお願いしたことであり、家族の迎えが来るまで駄菓子屋で待つことになったらしい。
学校で待つことに対する精神的な負担も否定できないためそれも考慮して丹下先生も
エビスじいちゃんの駄菓子屋に日葵を預けることをお願いしたそうである。
丹下先生「ところで日野さん、日葵ちゃんのことはどうしましょうか?」
日葵の母「店長のご実家に娘を預けようか考えております…」
丹下先生「え!?…わっわかりました…」
過去に日野は仕事を通じてエビスじいちゃんにいろいろお世話になっている身だから、かなり重い決断だったかもしれない。
エビスじいちゃんに頼らないことを前提で日葵を1日どうするか考えていたがもう手詰まりになってしまったみたいだ。
電話越しだがその声のトーンから複雑な心境を抱えていると感じた。
エビスじいちゃん以外に楓や翔吉たちといったクラスメイトが頼りなるかもしれないが今更迷惑をかけるわけにもいかない。
エビスじいちゃんの駄菓子屋をいざという時の子どもの第2の居場所として考えていたが
早くもそのいざという時が来てしまい出番がやってくるなんて思ってもみなかった。
力になると自ら趣、エビスじいちゃん本人がそういったがこうなることはきっと望んでいなかっただろう。
望んでいなかったにせよ仲間思いで子ども思いの優しいエビスじいちゃんなら喜んで引き受けてくれるはずだ。
日葵の母「私が直接電話で店長にお願いしてみます。」
丹下先生「はい、こちらも店長の駄菓子屋にお伺いしてみます。」
日葵の母「ありがとうございます」
丹下先生は職員室を出てエビスじいちゃんの駄菓子屋エビスへと向かい
日葵の母は電話でエビスじいちゃんに連絡をした。


日葵は現在は星川家のリビングで宿題をしていた。
本当は駄菓子屋店内でゆっくりさせたかったが注文したテーブルがまだ届いていないのである。
エビスじいちゃんは自分の分を含め、日葵にお茶を淹れてリビングのお気に入りの座布団に腰を下ろした。
エビスじいちゃん「まだテーブルが駄菓子屋にないからここで宿題やらせてすまんな」
日葵「ううん全然大丈夫だよ、エビスじいちゃん」
日葵「最初の時も家に招いてくれたもんね…」
エビスじいちゃん「あ~そうじゃったのう~あの時は…」
エビスじいちゃん「あっ!そうじゃ麦茶が足りなかったから代わりにお茶を出したんじゃったのう!」
当時のことを思い出すエビスじいちゃん。
あの時は日葵の友達でクラスメイトの楓も一緒だった。
駄菓子屋エビスを建てた経緯や日葵と楓がアドバイスしたことも記憶に残っている。
最初見た駄菓子屋エビスの第一印象として喫茶店やお茶会やコミュニティみたいなものを感じて
そう意見したことも日葵本人は覚えている。
現在お茶会を導入する計画を立てていることからも日葵が意見したことが反映されてきている。
日葵自身、自分の声と意見がこの駄菓子屋エビスの未来を左右するかもしれないとそう思い込んでいる。
エビスじいちゃんの実家で時を過ごすのもこれで2回目であり
距離も縮んできた訳なので最初よりもだいぶ居心地がいい。
しかし迷惑を掛けたくないので日葵は宿題に集中している。
時折エビスじいちゃんが声を掛けてくるのでもちろん元気よく返事をしている。
エビスじいちゃん「日葵ちゃんのご家族や親戚は山形に住んでおるのか?」
日葵「ううん、おじいちゃんとおばちゃんは新潟県で農家をしているの」
エビスじいちゃん「ほう~新潟か…ちょうど山形も南の方じゃのう」
日本列島の地図を大まかに思い浮かべながらエビスじいちゃんはそう言う。
新潟県には行ったことがないし土地勘もほぼゼロである。
旅行にはあまり行かず仕事一筋で実家を行ったり来たりであった。
もしかすると日葵の方が新潟県に詳しそうだ。
エビスじいちゃん「わしは新潟の方はあまり詳しくないが」
エビスじいちゃん「ここは(東根市)は真ん中ぐらいのところにあるから遠いかもしれんな」
山形県東根市は村山地域という県の中央部に位置している。
新潟県から山形県までのルートは様々だが
車で県の南部にある置賜地域を通って北上するルートでは山形県に着くまで約3時間はかかる。
新潟県のどこに日葵の家族が住んでいるか、つまり出発点がどこかによってさらに時間がかかるだろう。
日葵が言うには親族は新潟県の新潟市に住んでいるそうだ。
新潟市は日本海側に位置しているため高速道路を利用した国道113号と東北中央自動車道を経由するほうが最適かもしれないが
どのみちここまでつくまでに3時間はかかってしまう。
現在時刻は16時だから早くてもここに(山形県東根市)到着する時間が19時になるだろう。
そうなるとやっぱり日葵を学校で19時まで待機させるのは門限的に難しくなるので
日葵をエビスじいちゃんのところで預からせたのは1つの正解の選択肢である。
だから丹下先生がエビスじいちゃんの駄菓子屋を子どもの第2の居場所として言ったのも現実味を帯びる。
星川家の夕飯はいつも19時からなので日葵が同じ食卓で過ごすことも有り得そうである。
今日の理貴の仕事のシフトは日のため寄り道をしなければだいたい18時半過ぎなので
すれ違わず日葵と少しだけ時間を共に過ごすことになるはずだ。
エビスじいちゃん「うむ~新潟か…」
他県の方にはなるが新潟県で日野の両親がいるならここで一人で娘の日葵の世話をするよりも
あちらのほうで暮らしたほうがだいぶ楽なのかもしれないとエビスじいちゃんは日葵のないし日野家の将来のことで頭をよぎった。
エビスじいちゃん「なあ、日葵ちゃん、新潟のじっちゃんばっちゃんのところで暮らしたりはせんのかのう?」
日葵「う~ん」
率直に家族がいる新潟県で暮らすことを検討しているのか話すエビスじいちゃん。
まだ子どもの日葵にとっては重たい話であり、その話をするなら日葵の母の方がいいはずだ。
日葵は難しそうな表情を浮かべていて、やっぱりこの話は日葵にとってはまだ難しかったのかもしれない。
日葵「お母さんがオリーブで仕事しているから…」
エビスじいちゃん「あ!そうじゃったのう!」
日野家がこちらの山形県に住んでいるのは今の仕事があるからである。
AOZORAの「オリーブ」で現役の社員として働けているのはエビスじいちゃんの力もあるが
結局は日葵の母自身が選択した道なのだ。
もし正社員登用が叶わければ新潟の方に戻ることも視野に入れていたはずだ。
病院で面会した時に日葵の母はエビスじいちゃんに頼らずまずは他の方法を試してからと言っていた。
性格上、日葵の母は自分の力で解決できることはまず先に取り組む真面目な人なのである。
誰かの力を借りずに頑張ろうとする意志を物凄く感じた。
それが今の日野親子の家庭事情を強く表している。
しかし無理してはいけない。
日野家いや日葵の母が今必要なことは周りの人からの支援や協力が必要なのである。
ただ家族がいる新潟県に引っ越すということが必ずしも正解ではない。
日葵も桜林小学校で楓をはじめとした友達がいるし、最近ではエビスじいちゃんの駄菓子屋が心の拠り所になりつつある。
エビスじいちゃん「やっぱり友達がいるこの山形の東根で暮らしたいじゃろな」
エビスじいちゃん「後、わしの駄菓子屋もあるからのう、ふふ…」
日葵「うん、でもお母さんが決めることだから…」
エビスじいちゃん「うむ、日葵ちゃんはいい子じゃのう」
これからのことをどうするかは日葵の母が決めることであり日葵はそれに委ねるしかない。
引っ越しのことは飽くまでエビスじいちゃんがそう思っただけである。
まだ決まったわけではないが将来そのようなことも起きるのかもしれない。
だから今、日葵と一緒にいるこの時間と空間を大事にしていきたい。
星川家のリビングにいる日葵は、エビスじいちゃんの日常の雰囲気と空気を乱さないように撤して静かに宿題をしている。
模様替えや何か新しい家具が置かれたような変化には注目されるような感じで理貴は反応するかもしれない。
理貴が戻って来た時、日葵が家にいることに驚く理貴の表情をエビスじいちゃんは面白そうに思い浮かんでいた。
ちょっと寂しがり屋なエビスじいちゃんにとっては話し相手がいるだけでも嬉しいことなのである。
エビスじいちゃんのような高齢で同じくらい年の人と会話するときは大体、体の不調のことや不幸話ばかりで悲しくなるが
子どもと話すときは最近の流行のことは置いてけぼりを食らうかもしれないが自然と笑顔が沸いて楽しい会話ができる。
哀愁漂う空間も子どもがいるだけで活気にあふれるようになる。
星川家のリビングに子どもいるのが本当に奇跡なのであり、駄菓子屋を始めなければこんな経験は滅多にない。
それと同時にちょっとだけ罪悪感のようなものを感じており、
好きな人や憧れのあの人が自分の傍で二人っきりでいるみたいな体験をしているようで
自分の好きなものを詰め込み都合が良くそれだけになった最高の時間のようだ。




テーブルに置いてあるエビスじいちゃんのスマホに着信音が鳴る。
エビスじいちゃん「うむ?誰からじゃ?」
電話番号はいつもかけてくる理貴のものではなかった。
日葵はエビスじいちゃんのスマホの画面を覗き込む。
日葵「あ!それお母さんの!」
エビスじいちゃん「お!日野か!!」
着信してきた番号が日葵の母であることを知りエビスじいちゃんはすぐに応答した。
エビスじいちゃん「もしもし、星川です」
日葵の母「お疲れ様です店長…」
エビスじいちゃんは日葵の母との電話で家族の連絡がつき日葵の迎えを呼んだことを伝えると思っていた。
しかしその予想とは反するものであった。
日葵の母「父が腰を痛めてしまい、娘の面倒を見れないみたいです…」
エビスじいちゃん「なんと!?ありゃりゃ…」
日葵「そっか…」
電話から漏れた日葵の母の声を聴いた日葵も家族が面倒見れないことを理解した。
日葵の母「ご迷惑をお掛けして申し訳ないのですが…」
日葵の母「今日だけ日葵のことをよろしくお願いします…」
エビスじいちゃん「わかったぞ!任せろ!日野はゆっくり休んでおれ!」
待ってましたかのように日葵の母の依頼を喜んで引き受けたエビスじいちゃん。
これでもっとエビスじいちゃんの親睦を深めそうだが日葵は少し複雑な心境である。
日葵の母「娘はいますよね?丹下先生から聞きました。」
日葵の母「娘に変わっていただけませんか?」
エビスじいちゃん「おうわかったぞい」
スマホを日葵に手渡して母の声を聴く。
日葵の母「ごめんね日葵、今日は店長の家で過ごして」
日葵「うん!」
電話で話を聞く限りだが両親に頼れない日葵の母の気持ちがわかったような気がした。
日葵の母「日葵!私と店長の駄菓子屋行ったときはいっぱいお菓子かっていいからね!」
日葵の母「遠慮しなくていいからね!売り切れになるまで買っちゃおう!」
日葵「そうだね!お母さん!店長の駄菓子屋のお菓子いっぱい買っちゃおう!」
この恩を返すのはお菓子を買うことがふさわしいだろう。
スマホから漏れた駄菓子屋のお菓子を売り切れになるまで買おうとする日野親子の言葉にエビスじいちゃんはにっこりした。
病院の時に駄菓子屋のお菓子をたくさん買う宣言をしていたが
おそらくあの時の購買欲よりもっと旺盛になっていて、
なによりもエビスじいちゃんの駄菓子屋を恩返しも兼ね、より支援したいという意気込みが強く伝わってくる。
こういった持ちつ持つたれの関係を日野親子と築いていきたいところである。
日葵と日葵の母が親子で駄菓子屋エビスに来店する日が待ち遠しい。
だから今日は日葵はエビスじいちゃんの家でたくさん甘えて欲しい。
日葵の母から丹下先生が星川家の方に来るそうであると伝えその数分後くらいに丹下先生が訪問してきた。
玄関で日葵は丹下先生の横に並ぶように立ってお辞儀した。
丹下先生「お疲れ様です。店長!日野さんからご連絡があったと思われますが」
丹下先生「私からも日葵ちゃんの面倒をよろしくお願いします。」
日葵「よろしくお願いします。」
エビスじいちゃん「いえいえ、困っていることがあれば力になりますよ!」
丹下先生「お礼はもちろんですが、こちらも店長の駄菓子屋を構内で大々的に宣伝していきます。」
エビスじいちゃん「ありがとうございます」
日野親子だけでなく桜林小学校とも持ちつ持たれつの関係になりそうである。
丹下先生「では日葵ちゃん、お家に行って着替えを持ってきましょう。」
日葵「はい」
星川家で一日過ごすのであれば着替えは必要になる。
日葵は丹家先生と一緒に実家に戻って着替えを持ってくることにした。
日葵と丹下先生を見送り、日葵が今日一日泊まるのであれ
こちらは日葵が夜寝るための布団や毛布などを用意しなければいけない。
エビスじいちゃん「そうじゃな、日葵ちゃんの寝るとこはどうするかのう」
押し入れに余っている布団や毛布はないか探した。
すると妻の恵美須が使っていた布団と毛布を見つけた。
思い出が詰まっているので処分することができず予備のためにとっておいたのである。
この布団と毛布もようやく出番を与えられたようだ。
エビスじいちゃん「寝るところはどうするか後で日葵ちゃんに決めておくかのう」
候補は2つでありテーブルをどかしてリビングで寝かせるか、エビスじいちゃんの寝室のスペースを使って寝かせるかである。
どちらにするかは日葵に決めさせることにした。
押し入れから出した布団と毛布はエビスじいちゃんの寝室の空いているところに置いた。
約30分くらいで日葵と丹下先生が戻ってきた。
服と入浴剤が入った大きめの手提げバックを持って日葵が星川家の玄関に入ってきた。
まるでエビスじいちゃんが日葵の里親になったのかのような気分だった。
丹下先生「店長、改めて日葵ちゃんのことをよろしくお願いします。」
エビスじいちゃん「はい!任せてください。」




夕飯の支度を始めるエビスじいちゃんと日葵
エビスじいちゃん「夕飯はハンバーグにするか!」
日葵「うん」
そして19時近くに理貴が帰ってきた。
理貴「ただいま~うん?」
玄関の見覚えのないキッズスニーカが置いてあることに理貴は気づいた。
エビスじいちゃん「ようお帰り理貴」
玄関でエビスじいちゃんが出迎えてくれたが、傍にもうひとり女の子がいた。
理貴「え?日葵ちゃん!?」
日葵「今日一に泊まらせていただきます。」
状況が掴めず目を丸くする理貴であったがその女の子は日葵であることがわかった。
星川家で一晩過ごすことになった日葵、今後どのような展開が待ち受けるのだろうか。

続く
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