ジュンコチャン

第59話 やっぱりあいつと

※この小説にはプロモーションが含まれています。

玉入れでは反則プレーのみならず悪意はなかったが人に向けて玉を投げてぶつける危険行為までやってみせた順子ちゃん。
そして大玉転がしでは勝つことを優先したのかルールを無視して手ではなく足で蹴って大玉を転がした。
大玉転がしも仲間と協力する団体競技なのだが
ペアである友ちゃんと良樹は順子ちゃんの暴走に置いてけぼりを食らう。
さらに順子ちゃんの暴走は他のチームにまで巻き込んでしまう。
順子ちゃんがコースから大きく外れてしまった大玉を戻そうと蹴り飛ばした結果
他のチームの大玉とぶつかってしまい大パニックになる。
いったいこの先の展開はどこに向かうのだろうか。


ぶつかり合った3つの大玉はグラウンドの中央へ転がっていきそれを追いかける3チーム。
このまま次の走者に渡したいがコースに一度戻り、それぞれ定められたレーンで走って再開しなければいけない。
転がっていく3組チームのピンク色の大玉は順子ちゃんの身体能力で追いつきしっかり制御させた。
順子ちゃん「もう勝手に変なところに転がっていくんじゃないわよ!」
良樹「お前が言うなって!」
あらぬ方向に大玉が転がってしまったのは順子ちゃんのせいであり他のチームを巻き込ませたのも彼女なのである。
他のチームもなんとか大玉が遠くに行かずに静止させることができた。
1組チームの子「邪魔しやがって!」
2組チームの子「ちゃんとルールを守れよ!」
他のチームのメンバーたちは怒っているような口調で順子ちゃんに注意する。
順子ちゃん「うぅ~悪かったわよ、ごめんなさい…」
この事態を招いたのは自分であることは理解しているようで
他のチームが迷惑をかけてしまったのだと素直に順子ちゃんは彼らに謝った。
友ちゃん「蹴るんじゃなく手で押すんだよ」
それを見かねて友ちゃんは本来の大玉転がしのルールを教えてあげた。
順子ちゃん「え?やっぱり?」
友ちゃん「え?そうだよ…」
順子ちゃん「蹴った方が早いじゃん」
順子ちゃんのその返事はルール自体を聞いて覚えているみたいであるがやはり勝つことを優先していたみたいだ。
良樹「それがダメなんだっつーの!」
順子ちゃん「良樹だってボール蹴ってんじゃん!」
良樹「あれはサッカーだからいいんだよ!」
サッカーのルールを引き合いに出して大玉を蹴って転がすことへの正当化するような言い方だった。
ボールこそ扱うが、大玉転がしとサッカーはまったく別物だ。
常識を覆す奇想天外なことをやりたいのならまずはルールに従いその中で勝利の糸口とやらを見出してもらいたい。
むしろそんなことするよりも限られた中で正々堂々みんなと競技に取り組んでほしいものである。
これ以上は自分のせいで周りに迷惑をかけさせるのは良くないと思い
順子ちゃんは友ちゃんと良樹と一緒にピンクの大玉を次のペアに渡すまで転がした。
しかし順子ちゃんは不満げな様子だった。
3組チームで次に転がすグループは苗、里実、志音の女子ペアだ。
こちらのペアは順子ちゃんとは違い三人でまとまっている。
ルールを守ってくれる良い子ばかりなので嵐の後の静けさが訪れる。
順子ちゃんのこともあってか3組チームの名誉挽回するために重きを置いたのだろうか
苗たち女子ペアは慎重に大玉に転がすがどこかぎこちなさがある。
始めての大玉転がしだから当然か。
しかし他のチームは男女混合ペアで力強く前に進もうとする男子がいるおかげで
序盤の直線走路で勢いがあり、3組チームよりもリードした
順子ちゃんのインパクトからかなり控えめになった分それが裏目に出てしまう形になってしまった。
それでもルールを覚えることが最優先であり、この慎重な足取りこそが安定と呼ぶべきだ。
清水先生「ほら宮沢さん、あーやってみんなで手で転がして進むのですよ」
現時点の走者たちの大玉転がしの進め方を手本とした。
順子ちゃん「う~ん…」
苗たちの慎重に大玉を転がす姿に順子ちゃんは腕を組んで眉間にシワを寄せて眺めている。
現在3組チームは他のチームより後ろを走っていて劣勢状態にある。
自軍がこんな状態では順子ちゃんにとっては手本になっていないかもしれない。
順子ちゃんの心の奥底で「遅い!」という言葉が叫ばれていた。
清水先生が手本として言っているのは飽くまでルール自体のことで
苗たちのグループだけでなく他のチーム全体を含めての大玉転がしの進め方を理解してほしいということなのだ。
そしてここからはカーブコーナーに突入する。
人によっては難所になり、特に1年生のような初めての子にとっては苦戦してしまうだろう。
グラウンドのカーブは穏やかではあるが転がっていく大玉を制御できるかに左右されるだろう。
年々、初めての1年生はこのカープゾーンでコースから外れてしまうことがよくあった。
順子ちゃんたちも同じようなことが起きてしまったばかりだ。
苗たち女子ペアもカーブするところで玉がコースから外れてしまってた。
他のチームも男女混合ペアながらこのカープするところで苦戦しているようだ。
しかし順子ちゃんのような大きなハプニングは流石になさそうだ。
再び直線走路となり苗ペアもグラウンド半周大玉を転がすことができた。
清水先生「お疲れ様!川本さん、吉岡さん、和田さん」
大玉転がしを終えて戻ってきた苗たちに清水先生は労いの言葉をかけた。
清水先生「こんな感じでやるんですよ!宮沢さん」
順子ちゃん「けど曲がるところズレちゃってたじゃない」
納得しなさそうにカーブで曲がりきれてないところを指摘する順子ちゃん。
現在最下位のため「遅いわよ!」と言いたげな顔だ。
苗「結構あそこは難しかったわね」
志音「うん、うまく曲がれなかったね」
苗たちは素直にカーブコーナーが難所であることを言った。
清水先生「でも全然コースとかレーンに外れていなかったから問題ありません。」
清水先生「宮沢さんのほうが酷かったので」
比べる必要はないと思うが順子ちゃんよりも全然いいほうである。
順子ちゃんは他のチームにも迷惑をかけてしまっているので。



次のペアは大気、真木、勇、蓮の男子ペアだ。
それに対し1組チームには佐武郎を含めた男女混合ペアが大玉を転がす。
3組の男子ペアは知性派の勇と蓮、運動神経があり足の速い大気、
そして家族のラーメン屋を手伝いで培った足腰を持つ縁の下の力持ちの真木で
パワーバランスが絶妙な構成となっている。
遅れ気味の3組チームだがこの遅れを彼らなら巻き返してくれるだろう。
直接走路は難なく進めたがカーブコーナーはどう進めていくのだろうか。
勇「真木!蓮!お願い!」
真木「OK!」
蓮「了解!」
曲がるときに大玉が変な方向に転がらないように真木と蓮が脇で支えながら勇と大気は前へと大玉を手で押し出した。
これなら安定して曲がることができる。
まさに知恵と力は合わさった見事なチームワークである。
清水先生「素晴らしい!!」
良樹「おー!やるじゃん!」
清水先生「これですよ!これ!宮沢さん見ましたか?」
清水先生が順子ちゃんに見せたかった仲間と協力して取り組むことへの素晴らしさを勇たちが体現してくれた。
順子ちゃんペアと苗ペア、そして他のチームのペアの動きを観察していたのだろう。
勇たちはカーブコーナーで大玉を安定して曲がりきる作戦を考えていたみたいだ。
順子ちゃんみたいな問題児を1年3組は抱えているだけでなく
優秀な生徒がいることを知らしめることができ清水先生も内心嬉しく思っているであろう。
佐武郎「よし!俺たちもやるぞ!」
佐武郎の1組チームもまねしてカーブするところで誰かが支えになって大玉を転がす。
次いでに2組も同じように誰かが大玉を支えて転がしていく。
今年の1年生は相手チームをまねする傾向があるようだがこれも順子ちゃんと佐武郎が影響しているのかもしれないが
反則プレーまでまねしてしまう始末。
しかし今回に至っては許容範囲であり、こういったところで切磋琢磨してほしいところだ。
佐武郎「負けないぞ!3組チーム!」
佐武郎はさらに手の動きを早め3組チームよりも前へリードしようとする。
大気「距離だけでも縮めて次の人たちに渡すぞ!」
勇たちの作戦は他のチームが参考にしてしまうくらい素晴らしいものだが未だ他の2チームよりも遅れている状態だ。
1年3組の勇ペアは他の2チームとの距離を1歩でも縮めようとしている一方で
1組の佐武郎を始め他の人たちは次に繋げるため少しでも距離を稼ごうとしていた。
カーブーコーナーを抜け直線走路へ大玉を運んでいき
次の走者である2年生たちへとバトンという名の大玉を渡した。
清水先生「田中君、橘君、北岡君、武藤君、お疲れ様!」
清水先生は勇たちにも労いの言葉をかけた。
勇「すみません、順位を変化させることはできませんでした。」
清水先生「いえいえ、とてもいいチームワークでした」
里実「すごく参考になったわよ」
勇たちのチームワークは1年3組の名誉を挽回するほど素晴らしかった。
しかし順位は変わらず最下位のまま、順子ちゃんは「遅いわよ!」と言いたそうだ目付きをしていた。
順子ちゃんは過程よりも結果が全てなのである。
ここから2年生から6年生の大玉転がしが繰り広げられる。
上の学年になるにつれて大玉転がしはもちろん運動会の全体的な流れも把握しているため手慣れている。
順位の変動もあり盛り上がりを見せていた。
6年生で最後に大玉を転がすペアではまず1組のグループには大吾がいて
柔道経験者の彼の鍛え上げられた体格が有利に大玉を運んでくれるだろう。
2組チームには豪がいて少年野球をしている彼は球の扱いに長けているため
大玉転がしでもピッチャーのごとく大玉を素早く転がしチームを1位に導くかもしれない。
そして3組チームは幸助、薫、桂里奈の紅一点で最初の1年3組の順子ちゃんペアとは対照的である。
練習では真剣に大玉を転がす様子が見受けられるがまだ本気を出していないようだ。
本番ではそれぞれの個性がぶつかり合い白熱した試合が繰り広げられることが期待される。
幸助と薫は順子ちゃんのような問題を起こすことなく6年生としての威厳を見せ
桂里奈と一緒に大玉をゴールまで転がしていくのだった。
桂里奈もいるため、もう幸助と薫は問題を起こすことはないだろう。
これを成長と呼ぶべきなのだが嬉しさとどこか寂しさが牛久先生と板倉先生の中にはあった。
今回の大玉転がしの練習だが1組チームが1位となり次いで3組チーム、最下位となってしまった2組チームという結果になった。
順子ちゃんの暴走はとても印象に残るものであった。
その後は何事もなかったかのようにあるべき姿の大玉転がしとなりゴールまで運ばれたので
終わりよければ全て良しの清水先生の思惑通りになってくれた。
本番は順子ちゃんが暴走しないように清水先生が厳重に注意しないといけないだろう。



次の練習となる競技は台風の目だ。
台風の目とは二人から五人一組で1本の長い棒を持って
コースを走り折り返しのカラーコーンを1周して次のペアに長い棒を渡して最後まで繋げる団体競技である。
内側よりも外側の人が大きく回るため走る距離は長くなる。
できれば外側の人は足の速い人を選ぶべきだが支えとなる内側の人も重要になる。
力関係が同じくらいの人同士、同じ学年でペアを組んで行うことが多いが
水戸東小学校では違う学年と二人ペアで組んで行うことになっている。
2年生と5年生、3年生と4年生、そして1年生と6年生がペアになる。
クラスは各十人で統一されているため合計90ペアができる。
もしどちらかの学年のクラスに欠席者が出た場合は誰かが2回以上走ることになってしまう。
6年生と誰とペアになるかわからないが順子ちゃんと友ちゃんは桂里奈とペアになることを期待している。
それでもペアになれるのは二人のどちらかか違う人になることもあるので
二人は緊張して先生の指示を待っていた。
友ちゃん「もしかして…もしかするよね?」
順子ちゃん「ええそうね、私か友ちゃんどっちかが桂里奈お姉ちゃんのペアに」
しかし桂里奈のペアになったのはまさかの良樹だった。
順子ちゃん「えー!なんで!?桂里奈お姉ちゃんのペアになるのは私か友ちゃんでしょ!」
順子ちゃん「どうして良樹なのよ~」
良樹「いや…俺に聞かれても…」
良樹は桂里奈と接点が無いため意外な組み合わせとなった。
良樹は順子ちゃんと友ちゃんと桂里奈の関係性は知っているため
だから接点もあってより仲良しの順子ちゃんか友ちゃんが桂里奈のペアになると予想していたのだ。
それなのに自分が桂里奈のペアになってしまい良樹は困惑している。
桂里奈「よろしくね」
良樹「あっはい!いつもうちの順子がお世話になっております!」
良樹はいつもより堅苦しく桂里奈にあいさつした。
まるで順子ちゃんの保護者になったかのような感じで。
順子ちゃんの理解者であるが故、良樹の丁寧な素振りと慎重な態度から
彼もまた順子ちゃんに振り回されているのだと桂里奈も感じた。
大玉転がしの件でそれを大きく物語っていた。
桂里奈「はは…まあそんなに緊張せず…」
この運動会で良樹も桂里奈と関わりを持つことになるだろう。
順子ちゃんが桂里奈のペアにならなかったとしたら彼女のペアになるのはあの男しかいない。
牛久先生が指名したのは幸助でそれとペアになるのがやっぱり順子ちゃんだった。
幸助「え~また俺ですか~」
牛久先生「幸助、あの子を相手できるのはお前しかいないだろ?」
幸助「桂里奈がいるじゃないですか~?」
1年生対抗障害物リレーでは順子ちゃんとペアになって勝利に導いた功績があるこから
今回もこの組み合わせになることは自然なのかもしれない。
しかし他に候補者がいない訳ではなく柔道を習っていて優等生で面倒見がいい桂里奈でもよかったはずだ。
桂里奈「先生が決めたことなんだからしょうがないんじゃない?」
桂里奈「気張っていきなさいよ!」
口にはしていないが順子ちゃんとペアにならなくて良かったと思っている。
薫「俺は友ちゃんとか…」
例によっては例のごとく友ちゃんのペアになるのは薫であった。
でこぼこコンビのような順子ちゃんと幸助とは対照的なまとまった兄妹ペアである。
薫「友ちゃん、思う存分全力で走ってくれ!」
友ちゃん「うんわかった!」
内側を走るのが上の学年で外側を走るのが下の学年になっているため
薫が内側で支えとなるから友ちゃんは全力で走れということなのだ。
幸助「はあ~いいな~薫…」
か弱かった頃と比べて随分活発的になった友ちゃんだが順子ちゃんとは全然比べ物にならない。
そんな化け物のような順子ちゃんを支えなければならない。
ドッチボール大会でリーダシップを見せた薫に嫉妬していた幸助だが
今回は別の意味で薫のことを羨ましがっていた。
友ちゃんの息の合ったコンビプレーを見たいようで見たくない複雑な気持ちだ。
順子ちゃん「はあ~幸助とか…」
幸助を見つめて溜息する順子ちゃん。
言葉にできないくらい順子ちゃんに幸助は嫌悪感を抱いた。
溜息をしたくなるのは幸助のほうなのかもしれない。
順子ちゃんの暴走を制御できるのか心配になりそうだ。
今まで、少なくとも幸助の過去5年間の運動会まで台風のペアで不満はあっても変更されることは一度もなかった。
問題を起こしつつ去年までいろいろあっただろうが今年最後となる運動会は
薫と共に問題は起こさないことを誓い、有終の美を飾るほどの結果を残そうと決意していた。
もし結果は残せなかったとしてもそれなりに盛り上がる平穏な運動会を迎えたかった。
意を決して順子ちゃんと台風の目を走り切るしかない。
走る順番は相手チームに対抗するため戦力を練り清水先生と牛久先生の指示によって決定する。
牛久先生「最初に走るのは幸助と宮沢さんで行きましょう」
幸助「俺たちが最初から?」
大トリになる雰囲気を感じていたが最初から走ることに決まってしまった。
清水先生の終わり良ければ全て良し作戦なのだろうか。
位置について順子ちゃんと一緒に長い棒を持った幸助。
台風の目の練習はいったいどのような展開が繰り広げられるのだろうか。
続く
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